誰かの本で紹介されていたので、読んでみることにした。若松英輔さんの書物ではないだろうか。
「目に見えるものが目に見えないものに変わる消滅点」(p.97)という一節が著者の「あとがき」に出てくる。「目に見えないもの」。若松さんがぼくに教えてくださったもの。
「見えないものが載っている机には、/時の埃のように、/語られなかったことばが転がっている」(p.10)。
「目に見えないもの」は「言葉で語られないもの」でもある。
「なくてはならないものは、けっして/所有することのできないもの」(p.12)。
「目に見えないもの」は「所有することのできないもの」、つかめないもの、つかんだつもりになってはならないものでもある。
「話のための話はよそう。/それより黙っていよう。/最初に、静けさを集めるのだ」(p.19)。
「言葉ではないもの」がある、ということを、ひたすら言葉でしゃべり続けることはよそう。近代知、論理を超えたものについて、「論理」「知」を使って装ってひたすら語り続ける「学知」とは何なのか。
「遠くを見つめる目で、女は/じぶんの心の奥を見つめている」(p.31)。
「遠くを見つめる」ことと「じぶんの心を見つめる」こと、超越神を想うことと内在する聖霊を想うことは同じである。
タイトルは創世記の一節を想わせる。
「神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった」
目に見えない神のまなざしは世界の目に見えるものだけをご覧になったのだろうか。
神は目に見えるものの奥に目に見えないご自分の愛があることをご覧になったのではなかろうか。
「空を見上げているのに、/その空を覗きこんでいるような、/感覚に浸される」(p.80)。
天の神を仰ぐことと、心の中の聖霊を覗きこむこと。これは、目に見えないものを想うことにおいて、ひとつだ。
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世界はうつくしいと 単行本 – 2009/4/25
長田 弘
(著)
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『世界はうつくしいと』は、そう言っていいなら、寛ぎのときのための詩集である。寛ぎは、試みの安らぎであるとともに、「倫理的な力」ももっている。「寛ぎとはありとあらゆるヒロイズムを進んで失うこと」(ロラン・バルト)であるからだ。二十七篇の詩は、六年の日月をかけ、季節が一つめぐってくる毎に一つずつ、目の前の風景のなかにひそむ消滅点を一つずつ、じぶんの指で確かめるようにして、ゆっくり書き継がれた。――「あとがき」より
この詩集に収められた詩のタイトルをいくつか拾ってみよう。「窓のある物語」「机のまえの時間」「なくてはならないもの」「世界はうつくしいと」「人生の午後のある日」「みんな、どこへいったか」「大いなる、小さなものについて」「ゆっくりと老いてゆく」「カシコイモノヨ、教えてください」「モーツァルトを聴きながら」「蔵書を整理する」「大丈夫、とスピノザは言う」「人の一日に必要なもの」「グレン・グールドの9分32秒」……
ここにあるのは深く緩やかな言葉である。性急な時期は過ぎ去った、人生の午後はゆっくりと風景や時間に向きあうことがたいせつ。だれもが感じる日々の感興が、奥行きのある知性とますます自在な詩法で書き留められた、大人のためのポエム・コレクション。
この詩集に収められた詩のタイトルをいくつか拾ってみよう。「窓のある物語」「机のまえの時間」「なくてはならないもの」「世界はうつくしいと」「人生の午後のある日」「みんな、どこへいったか」「大いなる、小さなものについて」「ゆっくりと老いてゆく」「カシコイモノヨ、教えてください」「モーツァルトを聴きながら」「蔵書を整理する」「大丈夫、とスピノザは言う」「人の一日に必要なもの」「グレン・グールドの9分32秒」……
ここにあるのは深く緩やかな言葉である。性急な時期は過ぎ去った、人生の午後はゆっくりと風景や時間に向きあうことがたいせつ。だれもが感じる日々の感興が、奥行きのある知性とますます自在な詩法で書き留められた、大人のためのポエム・コレクション。
- 本の長さ104ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2009/4/25
- ISBN-104622074664
- ISBN-13978-4622074663
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商品の説明
著者について
詩人。1939年福島市に生まれる。1963年早稲田大学第一文学部卒業。1971-72年北米アイオワ大学国際創作プログラム客員詩人。毎日出版文化賞(82)桑原武夫学芸賞(98)講談社出版文化賞(2000)詩歌文学館賞(09)などを受賞。
詩集『われら新鮮な旅人』(1965)『メランコリックな怪物』(73/79)『言葉殺人事件』(77)(以上、現代詩文庫、思潮社)『深呼吸の必要』(84)『食卓一期一会』(87)『世界は一冊の本』(94)(以上、晶文社)『黙されたことば』(みすず書房、97)『記憶のつくり方』(晶文社,98)『一日の終わりの詩集』(みすず書房、2000) 『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫、03)『死者の贈り物』(みすず書房、03)『人はかつて樹だった』(みすず書房、06)『空と樹と』(詩画集、画・日高理恵子、エクリ、07)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社、08)。
エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫、93)『定本 私の二十世紀書店』(99)『アメリカの61の風景』(04)『知恵の悲しみの時代』(06)(以上、みすず書房)『読書からはじまる』(NHKライブラリー)『本を愛しなさい』(みすず書房)『読むことは旅をすること―私の20世紀読書紀行』(平凡社)など。
詩集『われら新鮮な旅人』(1965)『メランコリックな怪物』(73/79)『言葉殺人事件』(77)(以上、現代詩文庫、思潮社)『深呼吸の必要』(84)『食卓一期一会』(87)『世界は一冊の本』(94)(以上、晶文社)『黙されたことば』(みすず書房、97)『記憶のつくり方』(晶文社,98)『一日の終わりの詩集』(みすず書房、2000) 『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫、03)『死者の贈り物』(みすず書房、03)『人はかつて樹だった』(みすず書房、06)『空と樹と』(詩画集、画・日高理恵子、エクリ、07)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社、08)。
エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫、93)『定本 私の二十世紀書店』(99)『アメリカの61の風景』(04)『知恵の悲しみの時代』(06)(以上、みすず書房)『読書からはじまる』(NHKライブラリー)『本を愛しなさい』(みすず書房)『読むことは旅をすること―私の20世紀読書紀行』(平凡社)など。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2009/4/25)
- 発売日 : 2009/4/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 104ページ
- ISBN-10 : 4622074664
- ISBN-13 : 978-4622074663
- Amazon 売れ筋ランキング: - 61,003位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 17,268位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2023年11月19日に日本でレビュー済み
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詩なんて全然読んでこなかったが、ふとしたキッカケで、詩があるからこそ世界はより美しく味わい深いものになることに気付いた。本作はその期待を裏切らなかった。
2021年6月14日に日本でレビュー済み
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東日本大震災の直後、何かに導かれるように書店の棚で偶然この詩集に出会った。
あの時、僕を支えてくれたのは、大好きな音楽でも映画でもなく、この詩集だった。
あれから何人に贈っただろう。
傷ついたこころがゆっくりと癒されていく、絶望の淵に立つ者にかすかな希望を与えてくれる、とても静かで暖かい言葉たち。
未来に希望を持ちにくくい今だからこそ、すべての人に読んで欲しい。
人間は一篇の詩によって、救われることもあるのだ。
あの時、僕を支えてくれたのは、大好きな音楽でも映画でもなく、この詩集だった。
あれから何人に贈っただろう。
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2021年9月16日に日本でレビュー済み
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確かにその言葉通りになれば、どれほど楽で幸せだろうかとは思う。
でもそんなんで幸せになるなら誰も苦労しねーっすよ(笑)
ということで、ひねくれ者の自分には受け付けがたい部分も少なからずあり、内容の是非については「う〜ん…」という感じ。
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ということで、ひねくれ者の自分には受け付けがたい部分も少なからずあり、内容の是非については「う〜ん…」という感じ。
2021年7月8日に日本でレビュー済み
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本の内容はよかったです。
しかし、発送の仕方が毎回疑問です。
大雨なのに、紙の包みで、中の本も何のカバーもしてありません。ギリギリ濡れてはなかったですが、とてもこころもとないです。
いつも拍子がズレて折り目が付いていたりして、せっかく新品を買ってるのにと残念な気持ちです。もう少し改善してほしいです。
しかし、発送の仕方が毎回疑問です。
大雨なのに、紙の包みで、中の本も何のカバーもしてありません。ギリギリ濡れてはなかったですが、とてもこころもとないです。
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2021年6月8日に日本でレビュー済み
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綺麗に届きました
良かったです
良かったです
2021年3月12日に日本でレビュー済み
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毎夜ベッドでこの詩集を読みながら眠りにつきます。疲れた日は特に、早くこの詩集の世界に浸り心を穏やかにしたい、と感じます。言葉の数々に心が震えます。