日本中の直近の発掘現場の報告を一般人にも分かるように噛み砕いた解説が掲載してあり、豊富な写真のお蔭でイメージがつかめました。編著者が文化庁ですから、記述の確かさは折り紙付きです。巻末に数多くの執筆者と協力者、そして全国の教育委員会等の協力機関が載っていました。
一例を挙げますと、56ｐの「京都新城跡・公家町遺跡」は新聞でも報道されており、「秀吉最晩年の野望を示す幻の城発見!」のキャプションの通り、貴重な遺構の存在が分かってきました。仙洞御所内ですから、保存場所としては最適でしたが、逆にそれゆえ、なかなか発掘することも難しいわけで、消化設備新設というタイムリーなタイミングであったからこそ、この発見につながったわけです。遺跡や遺構の発掘は上物の新増設の機会がベストでしょう。
聚楽第や伏見城と同じ様に金箔瓦が出土しました。写真でも分かるように五七桐文の瓦に奇麗に金箔が残っています。場所が場所だけに、秀吉が朝廷への接近を試みているのは伺えます。今後の解明を待ちますが、最晩年の秀吉の野望の姿を知りたいと思いました。
「平安京左京一条三坊三町(58p)」は近世の町屋の遺構です。京都はどこを掘っても町中からは何かしらの出土品や遺構がでてきます。近世から中世、そしてもっと時代を遡るのにはもっと深く掘り進めないといけません。現在の京都御苑の西側に位置しますので、表題の「平安京」の頃に何がそこに存在したのかは分かりませんが、興味や関心を持っています。
近世もさることながら、平安京関係の遺構が浮かび上がってきたなら、もっと関心を寄せますが。
どうしても硬い内容が続きますので、一般の歴史好きの人にとってどれだけ訴求力があるのかは不明ですが、読み物として面白かったのは、広島県福山市の「鞆の浦(13～18)」の紹介でした。海上交通や交易の拠点です。観光地としても大変有名で、当方も2回ほど訪れ、その風光明媚さと瀬戸内海水運で栄えた町の素晴らしさを体験してきました。
以前、ブラタモリでも取り上げられていましたが、鞆の浦周辺は立地と言い、港の形状と言い、本当に栄えるべくして栄えた港だと思っています。歴史を知る上でも本書の様な分かりやすい記述は必要ですね。
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