著者の幼少期の回想録「花々と星々と」に続く、著者の青春時代、すなわち犬養毅首相暗殺の1932年5月15日(11歳)以降、著者がカトリックの洗礼を受ける1944年12月8日(23歳)までの回想録である。
時代は盧溝橋事件から日中全面戦争となっていき、アジア太平洋戦争に拡大、次第に敗色が濃くなっていく時期であり、祖父の犬養毅氏・父の犬養健氏がいずれも中国の要人たちと近しく、家族ぐるみの付き合いをしていたことから、若き日の著者も汪兆銘や髙宗武など、和平派の中国要人と親しく交際していた。
特に、犬養健氏が汪兆銘政権の顧問をされていた昭和16年2月から著者自身(当時19~20歳)も、「顧問秘書」の名目で上海に同行し、行き倒れの中国人の亡骸が道にころがっているのが当たり前という、中国人の生活苦を目にし、また、「殺、東洋鬼」のビラを貼っている抗日青年たちに出くわして危なかった話など、日中間の不幸な対立を直接体験しているのが印象的である。
また、娘が世界に視野を拡げて欲しいと考えた健氏の勧めで、道子氏が万国切手の収集をしていたエピソードが書かれていて、コレクションの中に尾崎秀実から貰ったソ連の切手が入っていたのが、あやうくゾルゲ事件絡みで特高の家宅捜索で見つかりそうになったり、その切手が終戦後に駐米留軍将校に高値で売れて、その代金が欠食児童のための基金(著者の慈善事業家としての出発点)になった話が印象的である。
犬養家では、こうした親から子への自由・平和といった理念を継承していく教育が行われていたことが偉いと思った。現在の日本の親世代が、戦争体験世代の苦い経験とは切り離されてしまって、自由や平和が当たり前という感覚で暮してきたのだが、その子供たちの世代に自由や平和の理念を伝える重要性に気付く必要がある。
また、語学を始めとして、勉強することの喜びや大切さを感じさせるエピソードも多く、耳が痛い。
本書の最期の方では著者が戦時下の時代背景のせいもあったのか、カトリックに入信するのだが、信仰心の無い私には理解しがたかった。
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ある歴史の娘 改版 (中公文庫 い 34-16) 文庫 – 1995/12/18
犬養 道子
(著)
- 本の長さ545ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1995/12/18
- ISBN-104122024927
- ISBN-13978-4122024922
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1995/12/18)
- 発売日 : 1995/12/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 545ページ
- ISBN-10 : 4122024927
- ISBN-13 : 978-4122024922
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