科学的な事例研究書というよりは、個人の物語に落とし込んだエピソード集という印象でした。
これはこれで好ましいです。文学的、比ゆ的な表現の多用も、本書には合っていると思いました。
さて、以下は主に沈没事故への教訓から述べられた記述ですが、
>この部門の最悪の事故のなかには、欠陥のある技術が、予想もつかないほど大きな自然の力に出会った事例が見られるということだ。
という点から、実はスリーマイルよりもチェルノブイリよりも、フクシマに当てはまる記述と思えたので引用します。
■
そうした最悪の事態を招く4つの要因をあげてみよう。(402ページ)
第一に、
きわめて多くの人がマシンのいいなりになり、そのマシンが正常に作動するという前提でのみ生命が保証されるような状況にたっていること
第二に、
こうした技術のかかえる問題はきわめて深刻で、良好な条件下でさえしだいに表面にあらわれはじめること
第三に、
現場担当者から提出された問題報告書に対して管理責任者が適切な処理をしていないこと
第四に、
地震や嵐といった自然の力が到来して、見せかけの安全性をぶちこわしてしまうこと
■
もう一点引用。こちらはストレートに原子炉の安全運用に関する原則を述べたものです。
■
原子炉の安全運用に関する7つの原則 (412ページ)
1
時間が経過するにつれ品質管理基準をあげていき、許認可を受けるために必要な水準よりもずっと高くもっていく
2.
システムを運用する人々は、さまざまな状況の元でその機材を運用した経験者による訓練をうけて、きわめて高い能力をみにつけていなければならない
3.
現場にいる監督者は、悪い知らせがとどいたときも真正面からそれを受け止めるべきであり、問題を上層部にあげて、必要な尽力と能力を十分につぎこんでもらえるようでなければならない
4.
この作業に従事する人々は、放射能の危険を重く受け止める必要がある
5.
きびしい訓練を定期的に行うべきである
6.
修理、品質管理、安全対策、技術支援といった職能のすべてが、ひとつにまとまっていなければならない。その手立てのひとつは、幹部職員が現場に足をはこぶことだ。
ことに、夜間当直の時間帯や、保守点検のためにシステムが休止しているとき、あるいは現場が模様替えしているときに。
7.
こうした組織は、過去の過ちから学ぼうとする意思と能力をもっていなければならない
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最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか Kindle版
現代における最も危険な場所の一つが巨大システムの制御室である。 原子力発電所、ジャンボ機、爆薬工場、化学プラント、核ミサイル基地…… 技術発展に伴い、システムはより大きく高エネルギーになり、人員はより少なくて済むよう設計されたが、事故が起これば被害は甚大になる。巨大システムが暴走を始めたとき、制御室で人びとは何をするのか、何ができるのか。 最悪の事故を起こすシステムと、その手前で押さえ込むシステムとの違いは何か。 50余りの事例を紹介しつつ、巨大事故のメカニズムと人的・組織的原因に迫る。
- 言語日本語
- 出版社草思社
- 発売日2017/8/8
- ファイルサイズ9492 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
著者について
ジェームズ・R・チャイルズ
米国の技術評論家。1955年生まれ。ハーバード大学卒業、テキサス大学ロースクール終了。科学技術と産業、社会との関係を考察する記事を雑誌に寄稿している。寄稿先は「スミソニアン」「エア・アンド・スペース」「オーデュボン」など。単行本の出版は本書が初めて。ミネソタ州ミネアポリス市在住。
高橋健次
1937年生まれ。慶應義塾大学英文科卒。出版社勤務を経て翻訳者。おもな訳書に、ウォーレス『人口ピラミッドがひっくり返るとき』、ブロックマン『2000年間で最大の発明は何か』(以上、草思社)、ケニーリー『誘拐指令』(講談社文庫)などがある。
米国の技術評論家。1955年生まれ。ハーバード大学卒業、テキサス大学ロースクール終了。科学技術と産業、社会との関係を考察する記事を雑誌に寄稿している。寄稿先は「スミソニアン」「エア・アンド・スペース」「オーデュボン」など。単行本の出版は本書が初めて。ミネソタ州ミネアポリス市在住。
高橋健次
1937年生まれ。慶應義塾大学英文科卒。出版社勤務を経て翻訳者。おもな訳書に、ウォーレス『人口ピラミッドがひっくり返るとき』、ブロックマン『2000年間で最大の発明は何か』(以上、草思社)、ケニーリー『誘拐指令』(講談社文庫)などがある。
登録情報
- ASIN : B075JF2HHQ
- 出版社 : 草思社 (2017/8/8)
- 発売日 : 2017/8/8
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 9492 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 429ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 197,987位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 760位軍事 (Kindleストア)
- - 867位軍事入門
- - 4,393位ノンフィクション (Kindleストア)
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トップレビュー
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2020年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
参考書として手元に置いておきたいと思い購入しました。
2018年4月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多くの事故事例や事故を回避した事例を考察していて、どうやって事故を回避するのか考えさせられる。事例が多いので技術者が読めばどれか一つはドキッとするところがあるのではないだろうか。事例も詳細に分析して文字に起こしてあるので、事故や災害防止のための水平展開にも役に立つかもしれない。だが、模式図が極端に少なく、破壊の連鎖の流れが全て文字で書かれているため、ある程度の経験がなければ内容を正確に理解するのは難しい。実際の緊迫した事態では、満足な図面や情報も無いなかで、電話で伝えられる情報を頼りに判断することもあり得るので、そういった場合の訓練にもなるのではなかろうか。
2019年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容を理解せずに文字面だけ訳したような日本語で理解困難。元の英文が想像でき、直訳に近い。内容が興味深いだけに残念。再訳を強く要望します。
2018年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
技術者サイドから考察された、チャレンジャー号やシティーコープタワーなどの事例集や書籍では語られていない部分や、考察が述べられており、本誌にあるような事故を、装置や施設の設計段階、施工段階で、技術者や予見することができ、事故を回避、予防できたはずだと思われる事例が多い。様々な読後感が得られると思うので、若い技術屋の方々にはぜひ一読を。
2021年3月9日に日本でレビュー済み
アピールポイント その1
事故の収録数がとにかく多い
チェルノブイリ原発事故、アポロ13号など有名な事故から、インドで起きた殺虫剤工場の爆発事故まで収録しています。
各章で事故の話をし始めたと思ったら、「そういえば、こんな事故があったな」と新しい事故の話へと脱線していきます。
収録の幅も広い。
機械、電気、情報、化学、原子力、宇宙、石油、航空機、建築、建設などのあらゆる工学分野での事故を収録しているので、理系の方は手にとって損することはないだろう。
アピールポイント その2
事故への考察が深い
事故の原因を設計、企画によるもの、運営や点検によるもの、人の体調や精神状態によって起きたものなどに分類されている。ここまで詳細に記載できるのは、筆者の文献調査力によるものだろう。
感想の統括
工学の人は読もう。
理系の人なら損はしない。
文系の人には難しいと思うが、社会倫理という面でみると役に立つ面もある
事故の収録数がとにかく多い
チェルノブイリ原発事故、アポロ13号など有名な事故から、インドで起きた殺虫剤工場の爆発事故まで収録しています。
各章で事故の話をし始めたと思ったら、「そういえば、こんな事故があったな」と新しい事故の話へと脱線していきます。
収録の幅も広い。
機械、電気、情報、化学、原子力、宇宙、石油、航空機、建築、建設などのあらゆる工学分野での事故を収録しているので、理系の方は手にとって損することはないだろう。
アピールポイント その2
事故への考察が深い
事故の原因を設計、企画によるもの、運営や点検によるもの、人の体調や精神状態によって起きたものなどに分類されている。ここまで詳細に記載できるのは、筆者の文献調査力によるものだろう。
感想の統括
工学の人は読もう。
理系の人なら損はしない。
文系の人には難しいと思うが、社会倫理という面でみると役に立つ面もある
2018年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年に文庫で発売された書籍ですが、本文中に例として記載されている事故はかなり古いものが多いです。
1960~70年代などの、事故事例を引用して、その原因や事故前に起きている細かな要因などが詳細に調査され、文庫に纏められています。
内容の濃さ、事故調査報告書の引用ポイントなど、読み応えがある書籍です。
事故やその原因に興味がある読者には、お勧めできる本です。
1960~70年代などの、事故事例を引用して、その原因や事故前に起きている細かな要因などが詳細に調査され、文庫に纏められています。
内容の濃さ、事故調査報告書の引用ポイントなど、読み応えがある書籍です。
事故やその原因に興味がある読者には、お勧めできる本です。