宮台先生による映画批評の本の、待望の第4弾。評論自体も、
監督自身把握しきれていない監督の『無意識の分析』に至る
ディープなもので、とても面白い。
『概念言語が与える二項図式を用いつつ、しかし信じずに前に
進む』ことがデリダ的な脱構築の作用だと書いてありましたが、
永遠と欺瞞に満ちた<普通>の考えを転倒させ続けて、それでも
引っ繰り返せない何かを示唆するような作品が可能なのは、
この二項対立のどちらかが上位だとマジガチで信じ込まない
思考能力があってこそのモノなんだろうなぁ、と感じました。
宮台先生は11年位、感情の働かないナンパマシーンと化して
いたらしいですが、感情が働かないとフロー状態になれない
のが苦しいですね。個人的につい最近まで感情がカラッポで
心が重かったので辛さが分かります。
『ア・ゴースト・ストーリー』の批評で、最後に主人公が成仏
出来るのは、自分の人生が『存在したという事実は消えない』
確信に至ったからだと書かれていました。個人的に、10代の
頃トランスに至って、楽しいことだらけだったのですが、何故
かその頃のことがあまり印象がなく、まるで夢でも見ていたよう
な実体感のない感じになっていることで、苦しんできました。
ですが、そういう確信が得られれば私も個人的に救われるな、
と想いました。
ヘルベルト・マルクーゼという思想家の話が出てきますが、丁度
個人的に、『単に幸せと云える状態より、濃密な地獄の方が幸せ
なのではないか』等と思惟していた所だったので、彼のことは
知らなかったのですが、自分の考えていることと氏の考えが
リンクしていて、不思議なシンクロニシティを感じました(とは
いえ、この種の゙偶然の一致゙は無意識の作用なのかままあるの
ですが)。
『圧倒的過剰が人間を人間的にする』という話は、よく分かり
ました。個人的に、世間の普通の人が全然普通に見えなくて、
突出して思考レヴェルの高い倫理的な存在だけが結果として
普通に(=人間的に)見える、と私の言葉で云うとなるのかな、
と想いました。人間というのは、何と非人間的なモノなので
しょうね。
タイトルの『崩壊を加速せよ』というのは、一度一番ダメに
ならないとこの国(も世界も)変わらないということなの
でしょうが、ダメになった後立て直す力が本当にあるんで
しょうかねぇ…?ダメになったまま終焉を迎えることはない
んでしょうかねぇ。尤も、今必要なのは上に書いたように
もっと事態を地獄にすることによって、その濃密な地獄の幸せ
を享受出来るようになることなのかも知れませんが…
『地上的な希望はとことんまで打ちのめされねばならぬ。その
ときだけひとは真の希望で自分自身を救うことができる』
カフカ『城』
今回も面白い批評でした。
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崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する 単行本 – 2021/4/30
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宮台真司がリアルサウンド映画部にて連載中の「宮台真司の月刊映画時評」などに掲載した映画評を加筆・再構成し書籍化したもの。 『寝ても覚めても』、『万引き家族』、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、Netflixオリジナルシリーズ『呪怨・呪いの家』など、2011年から2020年に公開・配信された作品を中心に取り上げながら、コロナ禍における「社会の自明性の崩壊」を見通す評論集となっている。 さらに、『スパイの妻』黒沢清監督との対談、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』について、ヒップホップミュージシャン・ダースレイダーと語った対談なども収録されている。
- 本の長さ424ページ
- 言語日本語
- 出版社株式会社blueprint
- 発売日2021/4/30
- 寸法12.7 x 18.7 x 3 cm
- ISBN-104909852093
- ISBN-13978-4909852090
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商品の説明
著者について
社会学者。東京都立大学教授。近著に『14歳からの社会学』(世界文化社)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(幻冬舎)など。
登録情報
- 出版社 : 株式会社blueprint; 四六判版 (2021/4/30)
- 発売日 : 2021/4/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 424ページ
- ISBN-10 : 4909852093
- ISBN-13 : 978-4909852090
- 寸法 : 12.7 x 18.7 x 3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 84,820位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 59位映画論・映像論
- カスタマーレビュー:
著者について
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1959年、宮城県生まれ。
社会学者、評論家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)、『中学生からの愛の授業』(コアマガジン)『<世界>はそもそもデタラメである』(メディアファクトリー)、『制服少女たちの選択』(朝日文庫)、『終わりなき日常を生きろ』(ちくま文庫)など多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年8月10日に日本でレビュー済み
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映画に対して到底自分じゃ理解が及ばないところまで解説してくれている。読んでよかった。
2022年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シネフィルにとって宮台真司の映画批評はほとんど視界の外にあるだろう。映画作品を現実社会の隠喩・換喩と見なし、作品の構造に社会批判を見いだす批評のアプローチは、蓮實重彦的テマティスムとは真逆と言ってもよいと思う。しかし、作品の社会的・政治的背景にあえて目を閉ざす(「深読み」をせずあえて表層に留まる)テマティスムのアプローチは、そもそも、そういった「深読み」アプローチが映画批評の前提であることへのカウンターという側面もあったはずだ。テマティスムのアプローチがむしろスタンダードなシネフィルの鑑賞態度になってしまったいま(そしてそのことで映画批評がまったく社会にとってアクチュアルなものではなくなってしまったいま)、もう一度、その相互補完関係を機能させるために、この宮台真司の映画批評のアプローチが「踏み越えられるべきもの」として再導入されるへきだと思う。つまり、本来宮台真司の映画批評のアプローチは異端なのではなく、むしろこれくらいの映画鑑賞態度(映画に限らず芸術全般に)がスタンダードに必要なのであって、そのうえで、さらにそこから逃れるように映画鑑賞することで、驚くべき発見が数多く生まれるはずなのだと思う。
以下の黒沢清映画の構造化ほど端的に黒沢清映画の本質を述べているものがあるだろうか? 『主人公は当たり前の世界(だと思っているもの)を生きている。ある日、そこにストレンジャーが訪れる。どんな意味であるにせよ、それはこの世ならざる存在だ。その訪れで、当たり前の世界が突然廃墟に変じる。今までの生き方は不可能になる。世間的な意味でそれは「悲劇」だが、主人公にとっては、それは社会への<閉ざされ>から、世界への<開かれ>に向けた「福音」だった……。(p30「まえがき」)』 黒沢清映画についてあくまで「形式」に留まりあえて表層的に論じるにしても、この程度の構造は前提として認識・把握されていない限り、どんな分析も空しいフェティシズムに過ぎなくなるのではないだろうか。
本書に収録されている作品評のうちいくつかの作品は未見だが、それでも本書は十分通読可能で有益である。そのことからも、本書が個別作品の価値判断以前の映画鑑賞の前提を提供してくれるものであることが言えると思う。本書の作品評それぞれに違和感があっても、本書の価値はまったく揺るがない。その意味で、一般読者はもとよりシネフィルにこそいま必要な書物なのではないだろうか。
以下の黒沢清映画の構造化ほど端的に黒沢清映画の本質を述べているものがあるだろうか? 『主人公は当たり前の世界(だと思っているもの)を生きている。ある日、そこにストレンジャーが訪れる。どんな意味であるにせよ、それはこの世ならざる存在だ。その訪れで、当たり前の世界が突然廃墟に変じる。今までの生き方は不可能になる。世間的な意味でそれは「悲劇」だが、主人公にとっては、それは社会への<閉ざされ>から、世界への<開かれ>に向けた「福音」だった……。(p30「まえがき」)』 黒沢清映画についてあくまで「形式」に留まりあえて表層的に論じるにしても、この程度の構造は前提として認識・把握されていない限り、どんな分析も空しいフェティシズムに過ぎなくなるのではないだろうか。
本書に収録されている作品評のうちいくつかの作品は未見だが、それでも本書は十分通読可能で有益である。そのことからも、本書が個別作品の価値判断以前の映画鑑賞の前提を提供してくれるものであることが言えると思う。本書の作品評それぞれに違和感があっても、本書の価値はまったく揺るがない。その意味で、一般読者はもとよりシネフィルにこそいま必要な書物なのではないだろうか。
2022年3月12日に日本でレビュー済み
自分は、本のキャッチーなタイトルを見てそのまま書店でこの本を購入した。
全体的に著者が映画のシーンを引用しながら、世の中をシニカルに批評するといった感じの内容。
(書店では映画のカテゴリにこの本が並んでいたが、中身を読んだ人ならわかる通り、あくまで映画を「媒介」として社会と共感能力・認知能力が劣化した人などを批評するといった具合の内容)
自分はこの著者の事を詳しく知らないが、単に本を読んだ正直な感想を言うならば、
これはファン以外の人が手に取った所でそんなに面白くもないだろうという点と、
それに加えて横文字を多用して賢こぶりたい人達が喜びそうな本だなと思った。
全体的に著者が映画のシーンを引用しながら、世の中をシニカルに批評するといった感じの内容。
(書店では映画のカテゴリにこの本が並んでいたが、中身を読んだ人ならわかる通り、あくまで映画を「媒介」として社会と共感能力・認知能力が劣化した人などを批評するといった具合の内容)
自分はこの著者の事を詳しく知らないが、単に本を読んだ正直な感想を言うならば、
これはファン以外の人が手に取った所でそんなに面白くもないだろうという点と、
それに加えて横文字を多用して賢こぶりたい人達が喜びそうな本だなと思った。