歴史上のブッダと同名・別人の主人公・シッダールタの悟りへの遍歴を描いた物語です。
最初、シッダールタは親友のゴーヴィンダと共に、ゴータマ・ブッダの教団に入りましたが、彼は親友を残して仏陀のもとを去ります。
ゴーヴィンダの方は、あくまで仏陀の教団に属し、その教義を学び、実践する事を最上と考えます。
極めて堅実な道ですが、それ故の落とし穴も有ることにゴーヴィンダは気付きません。
一方のシッダールタ、その後、長いあいだ世俗的享楽の生活を送りますが、次第に自己嫌悪の念に苛まれます。
そして川に身を投げようとするのですが、そこで思いもかけない神聖なひらめきに打たれて、我を取り戻しました。
以降、「川」の存在は、シッダールタを悟りへと導く、最も重要な役割を果たすのです。
そして、川の渡し守・ヴァズデーヴァとの運命の再会によって、シッダールタは人生の導き手をも得ることになりました。
物語の最終章、シッダールタとゴーヴィンダは、互いに老年に至って再会します。
迷えるゴーヴィンダは、仏陀の教義から離れたシッダールタに反発を感じつつも彼に、仏陀と全く同じものを見出だしたのです。
このクライマックスにおける一連の描写は、ヘッセ文学の中でも最高峰のものではないでしょうか。一部抜粋します。
「シッダールタのこの微笑は、彼[ゴーヴィンダ]自身いくどとなく畏敬をもって見たゴータマ、すなわち仏陀の微笑と全く同じだった。あのいつも変らぬ、静かな、美しい、はかり知れぬ、おそらくやさしい、おそらく嘲笑的な、賢い、千様もの仏陀の微笑であった。」
(Kindle版P.141・印刷書籍P.193 [ ]は評者。)
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シッダールタ(新潮文庫) Kindle版
『車輪の下』『デミアン』等で知られるドイツの文豪・ヘッセが描いた、釈迦「悟りへの道」。
20年にわたりインド思想を研究していたヘッセが、第一次世界大戦後に発表した。
シッダールタとは、釈尊の出家以前の名である。生に苦しみ出離を求めたシッダールタは、苦行に苦行を重ねたあげく、川の流れから時間を超越することによってのみ幸福が得られることを学び、ついに一切をあるがままに愛する悟りの境地に達する。
――成道後の仏陀を讃美するのではなく、悟りに至るまでの求道者の体験の奥義を探ろうとしたこの作品は、ヘッセ芸術のひとつの頂点である。
【目次】
第一部
バラモンの子
沙門たちのもとで
ゴータマ
目ざめ
第二部
カマーラ
小児人たちのもとで
輪廻
川のほとり
で 渡し守
むすこ
オーム
ゴーヴィンダ
注解
解説 高橋健二
本文より
彼は初めて世界を見るかのように、あたりを見まわした。世界は美しかった! 世界は多彩だった! 世界は珍しくなそに満ちていた! ここには青が、黄が、緑があった。空と川が流れ、森と山々がじっとしていた。すべては美しくなぞに満ち、魔術的だった。そのただ中で、彼シッダールタ、目ざめたものは、自分自身への道を進んでいた。このすべてが、この黄と青が、川と森が初めて目を通ってシッダールタの中に入った。それは、もはやマーラ(魔羅)の魔法ではなかった。……(第一部「めざめ」)
※マーラ…修行の妨げとなるもの。悪魔。
ヘッセ Hesse, Hermann(1877-1962)
ドイツの抒情詩人・小説家。南独カルプの牧師の家庭に生れ、神学校に進むが、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走、職を転々の後、書店員となり、1904年の『郷愁』の成功で作家生活に入る。両大戦時には、非戦論者として苦境に立ったが、スイス国籍を得、在住、人間の精神の幸福を問う作品を著し続けた。1946年ノーベル文学賞受賞。
高橋健二(1902-1998)
東京生れ。東大独文科卒業。ドイツ文学者。第8代日本ペンクラブ会長、芸術院会員、文化功労者。1931(昭和6)年ドイツ留学中に、ヘルマン・ヘッセを識り、交流が始まる。『ヘッセ全集』の全翻訳と別巻『ヘッセ研究』で1957年、読売文学賞を、1968年、『グリム兄弟』で芸術選奨文部大臣賞を受賞する。『ヴァイマルのゲーテ』『ケストナーの生涯』などの著書の他に、訳書多数。
20年にわたりインド思想を研究していたヘッセが、第一次世界大戦後に発表した。
シッダールタとは、釈尊の出家以前の名である。生に苦しみ出離を求めたシッダールタは、苦行に苦行を重ねたあげく、川の流れから時間を超越することによってのみ幸福が得られることを学び、ついに一切をあるがままに愛する悟りの境地に達する。
――成道後の仏陀を讃美するのではなく、悟りに至るまでの求道者の体験の奥義を探ろうとしたこの作品は、ヘッセ芸術のひとつの頂点である。
【目次】
第一部
バラモンの子
沙門たちのもとで
ゴータマ
目ざめ
第二部
カマーラ
小児人たちのもとで
輪廻
川のほとり
で 渡し守
むすこ
オーム
ゴーヴィンダ
注解
解説 高橋健二
本文より
彼は初めて世界を見るかのように、あたりを見まわした。世界は美しかった! 世界は多彩だった! 世界は珍しくなそに満ちていた! ここには青が、黄が、緑があった。空と川が流れ、森と山々がじっとしていた。すべては美しくなぞに満ち、魔術的だった。そのただ中で、彼シッダールタ、目ざめたものは、自分自身への道を進んでいた。このすべてが、この黄と青が、川と森が初めて目を通ってシッダールタの中に入った。それは、もはやマーラ(魔羅)の魔法ではなかった。……(第一部「めざめ」)
※マーラ…修行の妨げとなるもの。悪魔。
ヘッセ Hesse, Hermann(1877-1962)
ドイツの抒情詩人・小説家。南独カルプの牧師の家庭に生れ、神学校に進むが、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走、職を転々の後、書店員となり、1904年の『郷愁』の成功で作家生活に入る。両大戦時には、非戦論者として苦境に立ったが、スイス国籍を得、在住、人間の精神の幸福を問う作品を著し続けた。1946年ノーベル文学賞受賞。
高橋健二(1902-1998)
東京生れ。東大独文科卒業。ドイツ文学者。第8代日本ペンクラブ会長、芸術院会員、文化功労者。1931(昭和6)年ドイツ留学中に、ヘルマン・ヘッセを識り、交流が始まる。『ヘッセ全集』の全翻訳と別巻『ヘッセ研究』で1957年、読売文学賞を、1968年、『グリム兄弟』で芸術選奨文部大臣賞を受賞する。『ヴァイマルのゲーテ』『ケストナーの生涯』などの著書の他に、訳書多数。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1971/2/15
- ファイルサイズ810 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
出版社より
春の嵐 | デミアン | 車輪の下 | 青春は美わし | クヌルプ | 郷愁 | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.4
56
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5つ星のうち4.4
331
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25
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5つ星のうち4.4
65
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5つ星のうち4.5
66
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価格 | ¥605¥605 | ¥605¥605 | ¥440¥440 | ¥407¥407 | ¥473¥473 | ¥506¥506 |
【新潮文庫】ヘッセ 作品 | 暴走した橇と共に、少年時代の淡い恋と健康な左足とを失った時、クーンの志は音楽に向った……。幸福の意義を求める孤独な魂の歌。 | 主人公シンクレールが、友人デミアンや、孤独な神秘主義者の音楽家の影響を受けて、真の自己を見出していく過程を描いた代表作。 | 子供の心を押しつぶす教育の車輪から逃れようとして、人生の苦難の渦に巻きこまれていくハンスに、著者の体験をこめた自伝的小説。 | 二十世紀最大の文学者といわれるヘッセの、青春時代の魂の記録。孤独な漂泊者の郷愁が美しい自然との交流の中に浮びあがる名作。 | 漂泊の旅を重ねながら自然と人生の美しさを見出して、人々に明るさを与えるクヌルプ。その姿に永遠に流浪する芸術家の魂を写し出す。 | 都会での多くの経験の後で、自然の恵み深い故郷の小さな町こそ安住の地と悟った少年に、作者の自画像を投影させたヘッセの処女作。 |
知と愛 | シッダールタ | 荒野のおおかみ | メルヒェン | 幸福論 | ヘッセ詩集 | |
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カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.5
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5つ星のうち4.5
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5つ星のうち4.3
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5つ星のうち4.4
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5つ星のうち4.2
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5つ星のうち4.3
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価格 | ¥880¥880 | ¥605¥605 | ¥693¥693 | ¥572¥572 | ¥605¥605 | ¥572¥572 |
ナルチスによって、芸術に奉仕すべき人間であると教えられたゴルトムント。人間の最も根源的な欲求である知と愛を主題とした作品。 | シッダールタとは釈尊の出家以前の名である。本書は、悟りを開くまでの求道者の苦行を追いながら、著者の宗教的体験を語った異色作。 | 複雑な魂の悩みをいだく主人公の行動に託し、機械文明の発達に幻惑されて己れを見失った同時代人を批判した著者の自己告白の書。 | おとなの心に純粋な子供の魂を呼びもどし、清らかな感動へと誘うヘッセの創作童話集。「アウグスツス」「アヤメ」など全 9 編を収録。 | 多くの危機を超えて静かな晩年を迎えたヘッセの随想と小品。はぐれ者のからすにアウトサイダーの人生を見る「小がらす」など14編。 | ドイツ最大の抒情詩人ヘッセ──十八歳の頃の処女詩集より晩年に至る全詩集の中から、各時代を代表する作品を選びぬいて収録する。 |
登録情報
- ASIN : B01E6HG8US
- 出版社 : 新潮社 (1971/2/15)
- 発売日 : 1971/2/15
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 810 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 150ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 19,857位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 12位ドイツ文学研究
- - 401位評論・文学研究 (Kindleストア)
- - 404位新潮文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2023年11月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
哲学書、求道者の物語 両面で読み応え十分
2023年11月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
訳者高橋先生の解説によると、本書は「ヘッセ自身の宗教的体験の告白である」とのことです。Amazonの他のレビューによると、本書は必ずしも仏教を知るための本ではないと言うことです。それはともかく、ヘッセを知るために、本書は意味の深い文芸作品だと思い、勇んで読み始めました。しかし、わかりにくいので、星一つ減点。
まず本書の書名は「シッダールタ」ですが、釈迦が存命中の時代に生きた、シッダールタという名の別の青年が悟りを得るまでの過程を描いており、釈迦そのものを描いた作品ではありません。わたしは釈迦を描いた作品と思い込んで読み始めたので、大変混乱しました。特に出家に至る過程は釈迦のそれかと思わせました。
また、仏陀ということばを普通名詞として使っています。たしかに仏陀は普通名詞なのですが、そうだと知っている日本人は少ないでしょう。
さらに、仏教か哲学の言葉を頻繁に使っています。たとえば「真我」。一体何のことかわからず、よくある無理矢理外国語を日本語に置き換えた言葉かと思い、ドイツ語版と英語版の「お試し版」をチェックすると、そこではこれに「atman」というサンスクリット語をそのままあてています。本書の注解は「真我。本来は「気息」の意。生霊、魂、宇宙我などを意味する。」これでわかりますか?このことばの解説ないし言い換えをしている部分は、おそらく本書全体ですので、読み終わるまでわかりません。モヤモヤしたままです。無理に「真我」という漢字に訳さずに、英訳同様、アートマンという片仮名を使うことの方が、わからないまま読み進めてよいことが伝わり、混乱を避けやすいと思います。
また、「小児人」という訳のわからない言葉を使っていますが、これは「Kindermenshen」の訳です。英語版では「chidlike people」と訳しています。読み進めれば、俗物ないし現世を生きる一般人を意味するとわかるのですが、不自然な日本語です。ほかにも、高橋先生の誤訳ではないかと思われるような、前後の論理がつながらない文章や、逐語訳にすぎないので意味がわかりにくい文章がたくさんあります。
シッダールタとカマラや渡し守との会話は自然でリズムがあるのですが、わかりにくいことに懲りずに読み続ける必要があります。
ヘッセは第二部をいとこのWilhelm Gundertに捧げています。いとこから仏教を学んだんでしょう。あるいはそのきっかけを得たのだと思います。Wikipediaをみると、Wilhelm Gundertは長く日本でドイツ語を教えたり仏教を研究しています。その最大の功績は碧巌録のドイツ語訳の作成だそうですから、Gundertはおもに臨済禅を研究したのでしょう。一方、本書での時間の概念の説明や、衆生はもちろん花鳥草木や石ころにも仏性がある、としているところに、ヘッセは道元の影響を受けているという印象がします。もっとも、私の「NHK100分で名著」の「正法眼蔵」の回を読んでの印象に過ぎません。間違っているかもしれません。その程度でも、仏教知識があると、本書の話題は親しみやすくなると思います。高橋先生は「仏教語大辞典」等を見ながら注解を作ったそうです。もっとわかりやすい、ドイツ語と曹洞禅のわかる、日本語の上手な翻訳者による、新訳の出版を期待したいです。
まず本書の書名は「シッダールタ」ですが、釈迦が存命中の時代に生きた、シッダールタという名の別の青年が悟りを得るまでの過程を描いており、釈迦そのものを描いた作品ではありません。わたしは釈迦を描いた作品と思い込んで読み始めたので、大変混乱しました。特に出家に至る過程は釈迦のそれかと思わせました。
また、仏陀ということばを普通名詞として使っています。たしかに仏陀は普通名詞なのですが、そうだと知っている日本人は少ないでしょう。
さらに、仏教か哲学の言葉を頻繁に使っています。たとえば「真我」。一体何のことかわからず、よくある無理矢理外国語を日本語に置き換えた言葉かと思い、ドイツ語版と英語版の「お試し版」をチェックすると、そこではこれに「atman」というサンスクリット語をそのままあてています。本書の注解は「真我。本来は「気息」の意。生霊、魂、宇宙我などを意味する。」これでわかりますか?このことばの解説ないし言い換えをしている部分は、おそらく本書全体ですので、読み終わるまでわかりません。モヤモヤしたままです。無理に「真我」という漢字に訳さずに、英訳同様、アートマンという片仮名を使うことの方が、わからないまま読み進めてよいことが伝わり、混乱を避けやすいと思います。
また、「小児人」という訳のわからない言葉を使っていますが、これは「Kindermenshen」の訳です。英語版では「chidlike people」と訳しています。読み進めれば、俗物ないし現世を生きる一般人を意味するとわかるのですが、不自然な日本語です。ほかにも、高橋先生の誤訳ではないかと思われるような、前後の論理がつながらない文章や、逐語訳にすぎないので意味がわかりにくい文章がたくさんあります。
シッダールタとカマラや渡し守との会話は自然でリズムがあるのですが、わかりにくいことに懲りずに読み続ける必要があります。
ヘッセは第二部をいとこのWilhelm Gundertに捧げています。いとこから仏教を学んだんでしょう。あるいはそのきっかけを得たのだと思います。Wikipediaをみると、Wilhelm Gundertは長く日本でドイツ語を教えたり仏教を研究しています。その最大の功績は碧巌録のドイツ語訳の作成だそうですから、Gundertはおもに臨済禅を研究したのでしょう。一方、本書での時間の概念の説明や、衆生はもちろん花鳥草木や石ころにも仏性がある、としているところに、ヘッセは道元の影響を受けているという印象がします。もっとも、私の「NHK100分で名著」の「正法眼蔵」の回を読んでの印象に過ぎません。間違っているかもしれません。その程度でも、仏教知識があると、本書の話題は親しみやすくなると思います。高橋先生は「仏教語大辞典」等を見ながら注解を作ったそうです。もっとわかりやすい、ドイツ語と曹洞禅のわかる、日本語の上手な翻訳者による、新訳の出版を期待したいです。
2023年5月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
若い時感動した本。また、読みたくなった。古本でも良かったが、キンドルでも値段は変わらないし、便利。
再読してまた、感動した。
再読してまた、感動した。
2024年2月5日に日本でレビュー済み
正直言って、驚いた。自分は仏教徒でも僧侶でもないが、関心のままに読んでいる仏教関連の本や何かの中で、このドイツ・スイス人の作家の描いた悟りほどに明確な輪郭をもった解脱の様を他に知らない。言葉にすればまさしくこうなのだろうと思う。ただし、こういうものは絶対に言語化されないのだということを作者も解っていて、そう書いていて、読んでいる方もそれとわかる。著者30代半ばのインド旅行の産物としてこの本が生まれていることに驚く。私には奇跡のように見える。文中、ゴータマ・仏陀とシッダールタは別人として描かれている。お薦め
2022年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少し前の世代の本なのでそのつもりで読まないといけないと思いますね。
2022年11月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本語表現が堅いのであんまり伝わらないのかもです。英語版のほうがすんなり入ります。個人的にはチャプターのj後半から為になりる内容でした。各々のステージで理解が深まる話です。
2024年4月18日に日本でレビュー済み
題名からお釈迦様の伝記なのかと誤解しそうだが、解説を読むとシッダールタを主人公としたヘッセ自身の宗教的体験の告白らしい。ヘッセが20年もインド思想を研究していたとは、知らなかった。
冒頭の3行からして、解りにくい文章である。バラモンの美しい男の子や若いタカは、シッダールタのことを指しているのか?原文はどうなっているのか?訳があまり良くないのかもと思ってしまう。
第二部の「小児人(しょうにじん)たちのもとで」は、この小児人がどんな人を指しているのか?世俗の一般人のことを言っているのか?小人物という意味合いなのかも知れない。
第二部ででてくる川は単なる川ではないだろう。おそらく、何かの象徴で深い意味があるのではないか?例えば、この世とあの世をつなぐ川を連想する。すると、三途の川ということになるのかと思う。
第二部の「むすこ」では、カマーラによって甘やかされた十一歳の少年が出てくるが、これは現代社会にもいそうな少年で、ヘッセの古い作品であるが、少しも色あせない。
第二部のラストの方で、いよいよ核心に迫ってくる。名言連発である。「知恵は伝えることができない」とか、「時間は実在しない」とか、「時間を止揚し、いっさいの……同時的なものと見る可能性がある」など、しびれる名言ばかり。なんだか、アインシュタインの理論にも通じる話だ。
私が購入した本には、帯に女優の中谷美紀が愛読しているとあり、中谷曰く、「この本には正しくあれと言わない優しさがある」と書いてあった。随分と的外れなコメントである。ラストの方を読めば、そういうことを言いたかった訳ではないと、明白である。でもまあ、書評家ではなく、女優さんなので仕方ないか。
ヘッセは、確か中学生の頃に、「車輪の下」を読んだ記憶があり、それ以来なので50年ぶりくらいに読んだわけだ。(私はもうすぐ62歳だ)やはり、ノーベル文学賞をとるくらいの人の作品は凄いと感心した。
冒頭の3行からして、解りにくい文章である。バラモンの美しい男の子や若いタカは、シッダールタのことを指しているのか?原文はどうなっているのか?訳があまり良くないのかもと思ってしまう。
第二部の「小児人(しょうにじん)たちのもとで」は、この小児人がどんな人を指しているのか?世俗の一般人のことを言っているのか?小人物という意味合いなのかも知れない。
第二部ででてくる川は単なる川ではないだろう。おそらく、何かの象徴で深い意味があるのではないか?例えば、この世とあの世をつなぐ川を連想する。すると、三途の川ということになるのかと思う。
第二部の「むすこ」では、カマーラによって甘やかされた十一歳の少年が出てくるが、これは現代社会にもいそうな少年で、ヘッセの古い作品であるが、少しも色あせない。
第二部のラストの方で、いよいよ核心に迫ってくる。名言連発である。「知恵は伝えることができない」とか、「時間は実在しない」とか、「時間を止揚し、いっさいの……同時的なものと見る可能性がある」など、しびれる名言ばかり。なんだか、アインシュタインの理論にも通じる話だ。
私が購入した本には、帯に女優の中谷美紀が愛読しているとあり、中谷曰く、「この本には正しくあれと言わない優しさがある」と書いてあった。随分と的外れなコメントである。ラストの方を読めば、そういうことを言いたかった訳ではないと、明白である。でもまあ、書評家ではなく、女優さんなので仕方ないか。
ヘッセは、確か中学生の頃に、「車輪の下」を読んだ記憶があり、それ以来なので50年ぶりくらいに読んだわけだ。(私はもうすぐ62歳だ)やはり、ノーベル文学賞をとるくらいの人の作品は凄いと感心した。