真実の愛を求め続け、巡り合えないでいる二人の男。もうとっくに盛りを過ぎ若い女には相手にされない。
しかし卑屈になったりせずに「バカ」を演じ続ける。
ある日調子に乗って盗んでしまった若い女の屍体、シモンは名も知らぬその屍体に恋をしてしまう。
グロテスクな禁断の行為と言ってしまえば、それでオシマイ。
しかしこの映画で描かれるものは、静謐で美しい。
「情婦マノン」、死んでしまった恋人を引きずって砂漠を歩き去る男、行き止まりの結末、、、。
屍体への愛、それはある意味で究極の愛、、、相手がそれに応えることはないかわりに決して裏切られることのない安寧がある。
愛した屍体を海に弔おうとするシモン、彼の決死の表情は敬虔でさえある。
ネクロフィリアの秘密を共有するのはデデだけ、、、。
ハードなはずのジミ・ヘンドリックスやプロコル・ハルムが、この物語の横糸としてむしろ静かに流れる。
スピリチュアルな不可視の世界を、あえて映像の中に描き出そうとするベッソンの恐るべき野心、、、。
原作者はオールドパンク(無頼老人)と呼ばれたチャールズ・ブコウスキー、自伝や他の小説もいくつか映画化されているが、色々な意味でケタ外れの人物だったようだ。
ネクロフィリアはそんな彼なりの反権威のメタファーと見ることもできるだろう。