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イメージ付きのレビュー
なんという美しい本！
なんという美しい本だろう。初めから最後まで一気に読ませる飾りのない文章の美しさとわかりやすさを支えるのは、並たいていではない力量である。対象となるキリンの美しさが行間から伝わり、30頭のキリンの死体と切りん結んだ若い女性の格闘記録の厳しさが美しい。子どもの頃から大好きなキリンへの思いが美しく、その思いを忘れない解剖の丁寧さが美しい。「長い首の不思議」。その一筋の道にブレない著者の強靱な科学者魂が、みずみずしい情感あふれる言葉でつづられ、その場に立ち会ったように再現されて伝わってくる。何にもましてうらやましいのは、その若々しい力強さだ。その活動を支えた背景が最後に明かされている。「無目的、無制限、無計画」（！）と。この博物館の広大な基盤の中で、世界一キリンを解剖した著者が生まれる。あるいは、ここに日本の生物学の未来にも希望があるのかもしれない。これこそ、無尽蔵の富の扉を開く呪文（現代的にはキーワードかな？）である。「直指端的の道に精進し、祖々の三昧を嫡嗣」する若い世代の、輝くような登場である。
