「大鞠家殺人事件」(芦辺拓 東京創元社)を読み終えました。
舞台は、大阪、船場。昭和を知る人間にとっては、或る高名なテレビ番組を真っ先に思い浮かべます。
明治三十九年、パノラマ館のエピソードが大正三年の「大鞠家」の祝言を経て、昭和十八年からの「連続殺人事件」へと繋がります。本格パズラーですから、これ以上語ることができません。語り出すと止まらなくなる内容が多く含まれているため、自戒しましょう。じっくりとお読みください。
戦中、戦後を生き抜いた「大鞠家」のクロニクル。特筆すべきは、徴兵によって男たち不在の<大阪>を生きる女たちが思いのほか悲しみをもって語られ、就中、数多あったであろう「薬問屋」の生業とそこを生きる<番頭はんと丁稚どん>たちの今では特異な世界が(ユーモアをたたえながら)丁寧に描かれ、郷愁を、切なさをもたらします。それは、サウダージと言っていいのかもしれません。
傑作パズラーだと思います。
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大鞠家殺人事件 単行本 – 2021/10/12
芦辺 拓
(著)
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斬りつけられた血まみれの美女、
夜ごと舞いおどる赤頭の小鬼、
酒で溺死させられた死体―
怪異、謎解き、驚愕、これぞ本格推理。
大空襲前夜の商都・船場を舞台に描き、
正統派本格推理の歴史に
新たな頁を加える傑作長編ミステリ
〝物語作家″芦辺拓はここまで凄かった!
大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。だが夫は軍医として出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を? 正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!
夜ごと舞いおどる赤頭の小鬼、
酒で溺死させられた死体―
怪異、謎解き、驚愕、これぞ本格推理。
大空襲前夜の商都・船場を舞台に描き、
正統派本格推理の歴史に
新たな頁を加える傑作長編ミステリ
〝物語作家″芦辺拓はここまで凄かった!
大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。だが夫は軍医として出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を? 正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!
- 本の長さ363ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2021/10/12
- 寸法13.7 x 2.8 x 19.5 cm
- ISBN-104488028519
- ISBN-13978-4488028510
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出版社より
登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2021/10/12)
- 発売日 : 2021/10/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 363ページ
- ISBN-10 : 4488028519
- ISBN-13 : 978-4488028510
- 寸法 : 13.7 x 2.8 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 351,428位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
べたべたの船馬言葉を読んだ時脳裏に鳴り響いたのは故3代目笑福亭仁鶴の声でした。そして仁鶴師匠も出演したはった「けったいな人々」という茂木草介のドラマを思い出して、懐かしいなあと思いましたら、設定で「けったいな人々」へのオマージュが出てきて、ああやっぱり大阪商人世界というならそれやわなぁと。その上クラシックな探偵小説をご存じな方にはピンとくる、知らなくてもそのカラクリに納得する展開が最後まで心地よい小説でした。娯楽の原点に触れて満足しました。
2021年11月21日に日本でレビュー済み
昭和20年、大阪船場で、かつて化粧品販売で財を成した大鞠家で起きた連続殺人事件。
終戦間近の統制の厳しい市井の雰囲気が良く分かり、当時の社会の仕組みや経済の発展を支えた丁稚制度についても興味深かった。
ミステリーとしても、惨劇や不可解な事象が次々と起こり飽きさせず、最後はしっかりと伏線も回収して、その醍醐味を味わえます。
終戦間近の統制の厳しい市井の雰囲気が良く分かり、当時の社会の仕組みや経済の発展を支えた丁稚制度についても興味深かった。
ミステリーとしても、惨劇や不可解な事象が次々と起こり飽きさせず、最後はしっかりと伏線も回収して、その醍醐味を味わえます。
2023年5月4日に日本でレビュー済み
古典名作ミステリーの名前や一文がたびたび登場するので、おっ、と楽しめるかと思います。戦前大阪の空気感や教科書では語られない戦中の庶民の暮らしなども知識欲が満たされます。それがかえってミステリ要素の邪魔をするというかミステリ要素が邪魔になるというか…。記憶に残るような伏線もなく唐突に現れる物事や人物が多く、「えっ、誰?」となることもしばしばです。焦点は殺人事件より大戦末期の大阪の風俗や人々の息づかいにあると感じました。
読んでいてまざまざと映像が浮かび上がる文章や、未来から過去へ、過去から少し先の未来へと移り変わる転換も楽しく、ミステリに重きをおかなければ買って損はない作品です
読んでいてまざまざと映像が浮かび上がる文章や、未来から過去へ、過去から少し先の未来へと移り変わる転換も楽しく、ミステリに重きをおかなければ買って損はない作品です
2022年1月6日に日本でレビュー済み
2021年に刊行されたミステリーとしては傑作だと思います。著者の作品のなかでも一、二を争う出来だと思います。明治以降の大阪の船場の生活様式がよく描かれていて、その点でも興味深く読むことができました。また、この手のミステリーにありがちな、型にはまった登場人物の紹介と、事件ごとに繰り返される捜査側による聞き取りの繰り返しという、退屈極まりない展開に陥っていない叙述もうまい。素人作家はすぐこの欠点が出てしまい、読み手はそれにつきあわせられて退屈してしまうのですが、そうなっていない点はさすがです。また、著者の大阪に対する愛情が全編にただよっているのもよい。。☆1つ、という評価もあるようですが、これは、著者が愛好する乱歩以降の「探偵小説的」遊びこころの傾向を好まない方の評価だと思います。ただ、この作家さんは、そういう負の評価がありうることを十分意識して書かれており、またこうした趣向が探偵小説の魅力の大きな部分と意識して確信犯的にやっているので、作品的な価値を貶めているわけでは決してありません。むしろ、そうした「古い探偵小説」趣味を、本格的な小説の中に消化させているところがこの作品の見事なところだと思います。近年の大阪における「新興勢力」にたいする批判も見られてニヤリとさせられます(あ、☆1つはもしかしたらその所為か)。最後に、芦部さんに提案がひとつ。芦部さんの多くの作品は魅力的なものですが、探偵役に森江春作を多用するのはやめたほうがよいと思います。こう言うとご不快でしょうが、森江は探偵役としては魅力がない。法廷ものか、バラエティーものか、登場させる作品を限定したほうがよいと思います。今回の作品が傑作に仕上がっているのは、彼を登場させなかったこと(時代的には無理なのですが)に大きな理由があるように思います。その点で、担当編集者さんのご指摘はまったく正しい。
2022年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
力の戦災で繊細で灰燼に灰燼に帰すところなど、大河の雰囲気もある。本格好き、乱歩、正史好きの読者にはたまらないだろう。実は小生はこの手の本格はあまり好みではないが、それでもつられて読んでしまった。
2022年6月10日に日本でレビュー済み
ミステリなんだよね?
伏線じゃなくて全てが後出しジャンケン。なのに犯人は早めに見当ついちゃう。
伏線じゃなくて全てが後出しジャンケン。なのに犯人は早めに見当ついちゃう。