原著書は1938年に英国で刊行された。いわばサッカー本の「古典」である。
史料の上に初めてフットボールに関する記述が現われたのは、14世紀のこと。しかもその記述とはフットボールの「禁止令」。
以降、為政者は変わっても禁圧は繰り返されたが、原始フットボール（以下蹴球）は英国の民衆の間で受け継がれてきた。
19世紀の「近代社会」のもとで「協会」が設立され、蹴球が「ラグビー」と「アソシエーション（=サッカー）」に分化するまでの間、人々は、
仕事も、学業も、宗教儀式も放り出して蹴球に興じ（今と同じだ！）、
試合のあとさきに酒をのみ（今と同じだ！）、
時として暴力沙汰に及び（残念ながら今も同じだ）、
社会階層間、地域間の対立を蹴球の場で「ガス抜き」してきた（日本では馴染みがないが、やはり今も同じだ）。
だからこそ蹴球は常に為政者と対立関係にあり、近代化の名のもとに蹴球が「飼い慣らされた」後も、（ラグビーはともかく）サッカーは、為政者が統御しきれない民衆側の社会装置として機能してきた。
本書はそうした民衆の側に立った蹴球の姿について、近代以前を中心に取り上げている。
ひるがえって現代。かつては原初の蹴球の色彩を（見る方もやる方も）色濃く残していた「祖国」イングランドサッカーにおいてすら、いまや変貌を遂げようとしている。
合理性や商業主義のもとにサッカーをやる方にも見る方にも実践されている「モダンさ」とは、果たしてサッカーの本質に沿ったものなのかどうか。疑念が湧いてきませんか？
サッカー者の基礎教養として必読の書。
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