この本は、右も左も分からない映像制作初心者が読んで、頭から「最初に何をして、こう言う事に気を付けて、次は……」みたいに真似るだけで長編映画が作れる様になる類のハウツー本では無い。
一つの特殊な切り口を深堀して解説する様な、先進的な技術書と言うわけでもない。
この本は、126本の様々な映画を分析し、例として、制作術単位で実際にどのように使われているかを解説するタイプの、どちらかと言えば優秀な事例集だ。
映像制作の個別手法を上記5つの章、42の節、それらを更に分けた小節、126本の映画を適材適所使って解説しているのが本書の基本構成となっている。
本書の中で説明される映像制作術は、特別目新しい物では無い。
章や節に対して個別になら、更に詳しく書かれた専門書がいくつも出ているだろうし、ネットで調べれば情報は幾らでも見つかるだろう。
では、本書の価値は低いのかと言うと、決して、そうでは無い。
「特別でない」「当たり前の手法」と聞くと、面白みが無いと感じるかもしれないが、それは当然だ。
当たり前の手法とは、道具に過ぎない。
例えば、工作をする際、必要な道具としてカッターナイフの機能を丁寧に説明されても、使い方は知っているし、特筆して面白く無い筈だ。
マインクラフトでブロックの効果や組み合わせて使うテクニックを説明されても、それだけでの面白さは、たかが知れているだろう。
この本の価値は「誰もが知る様な名作が、当たり前の手法を、いかに効果的に使って作られているか」を、実在の名作を例に解説していると言う所にある。
126作品の名作映画を使って1作1テクニックの解説に充てているので、1作1ページ程度でも全体で、かなりのボリュームがある。
解説では、象徴的か、該当するシーンを必ず1カット以上使用しての説明があるので、視覚的手法では、ある程度参考になる筈だ。
膨大な情報が制作術のカテゴリー毎に分けられて書かれているので、辞書的に必要な制作術を探して、制作する上でのヒントとする事が出来る。
どの様な手法の制作術やテクニックが一般的に存在するのかを、基本的な所なら広範囲で解説されているので、初心者でも一通り目を通せば、映画制作の基本を把握するのに役立つ筈だ。
また、名作を通して、普遍的な制作術がどの様に効果的に使われているかを説明されていると言う事は、構造的・表現的に名作を分解して見ると言う事であり、その視点の切り口が読者に無かった場合、名作を見直した時、作品の別の顔が見えてくる。
制作者が狙って入れた細部に光る職人技やこだわりに注目して見るのは、映画好きな人であればあるほど楽しい筈だ。
なので、映画好きな人は、それを目的に読んでも楽しめるだろう。
ただ、掲載されている制作法は、行程順ではなく制作カテゴリー毎に分けられているので、映画の作り方をある程度分かっていないと、この本単体では映画を作るのには説明として足りないと感じた。
例えば、
・演技(アクティング)
・監督(ディレクティング)
・照明&カメラ(ライティング&カメラ)
・編集(エディティング)
・脚本(ライティング)
と言う章の見出しだけを見ても、それぞれ専門的なパートを専業で行うなら関係無いが、いくつかのパートを兼業する場合は、制作順として章を考えると、明らかに前後する部分がある。
1章のアクティングでは、
・メソッド演技
・即興(アドリブ)
・リハーサル
・モノローグ
・モチベーション
・アマチュア
が順に解説されているが、そこに順序の法則性は薄い。
そういう点を見ても、この本は単体で完結するタイプの本では無いのが分かる。
別の映画撮影のハウツー本や、映画学校の授業の補助、そう言った場面でこそ本領を発揮するだろう。
本棚の映画資料本コーナーにあると嬉しい一冊だ。
名作映画の分析を通して、映画への理解を深め、初見とは違う見え方をする名作を楽しむ為のツールとして買うのであれば、お値段以上の価値があるだろう。
反対に、掲載されている映画を見た事が無く、好きでも無い場合、この評価は、当てはまる映画の本数に左右されて上下する事になるので、例に使われている名作映画や、その監督に、好きな・興味がある物・者がどの程度あるかを事前に調べてから買うかどうかを考えるのが良いだろう。
参考になれば幸いです。
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映画はこう作られていく Kindle版
映画史に残る、126本超の作品を新たな視点で分析!
"心に残る映画、心を揺さぶる映画、画期的な映像を支えるアイデアやテクニックとは?
映画史に残る、126本以上の作品を新たな視点で分析!
「ムーンライト」:孤独な少年の疎外感を演出した撮影テクニックは?
「ダンケルク」:それぞれの戦いを紡ぎあげた編集テクニックは?
「ゼロ・ダーク・サーティ」:緊迫のドラマをリアルに伝えるライティング戦略は?
「市民ケーン」のディープフォーカス、「レザボア・ドッグス」のスローモーションといった、有名なテクニックも幅広く取り上げています。本書を読んだ後は、映像表現の可能性を広くとらえられるようになります。
映画制作を5つの主要な工程に分割
-アクティング
-ディレクティング
-ライティング&カメラ
-編集
-脚本
見事な定番手法の実践例、ひねりを利かせた例外的なアイデア、画期的な取り組みなどを具体的な作品の画像で解説し、映画・映像のスタイルを掘り下げます。
映画・映像を作りたい学生、映像作家志望者の必読書です。
また、カメラの向こう側で何がどう行われているかを知りたい映画ファンには、読み物として楽しめる1冊です。
※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
"心に残る映画、心を揺さぶる映画、画期的な映像を支えるアイデアやテクニックとは?
映画史に残る、126本以上の作品を新たな視点で分析!
「ムーンライト」:孤独な少年の疎外感を演出した撮影テクニックは?
「ダンケルク」:それぞれの戦いを紡ぎあげた編集テクニックは?
「ゼロ・ダーク・サーティ」:緊迫のドラマをリアルに伝えるライティング戦略は?
「市民ケーン」のディープフォーカス、「レザボア・ドッグス」のスローモーションといった、有名なテクニックも幅広く取り上げています。本書を読んだ後は、映像表現の可能性を広くとらえられるようになります。
映画制作を5つの主要な工程に分割
-アクティング
-ディレクティング
-ライティング&カメラ
-編集
-脚本
見事な定番手法の実践例、ひねりを利かせた例外的なアイデア、画期的な取り組みなどを具体的な作品の画像で解説し、映画・映像のスタイルを掘り下げます。
映画・映像を作りたい学生、映像作家志望者の必読書です。
また、カメラの向こう側で何がどう行われているかを知りたい映画ファンには、読み物として楽しめる1冊です。
※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
- 言語日本語
- 出版社ボーンデジタル
- 発売日2021/6/25
- ファイルサイズ107544 KB
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- 販売: Amazon Services International LLC
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商品の説明
著者について
ティム・グリアソンは、Screen International誌の米国上級映画評論家であり、Pasteの主任映画評論家です。Rolling Stone誌、Popular Mechanics誌、Vulture、MELにも頻繁に寄稿しています。「FilmCraft: Screenwriting」「Martin Scorsese in Ten Scenes」など、著作は6冊にのぼります。
登録情報
- ASIN : B09HGWWLXL
- 出版社 : ボーンデジタル (2021/6/25)
- 発売日 : 2021/6/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 107544 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効になっていません。
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : 有効になっていません
- Amazon 売れ筋ランキング: - 458,302位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,135位映画 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中3.6つ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年7月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
—本書は映画制作のテクニックをこと細かに説明してはいません—「はじめに」より引用
こう語られていることからも明らかなように、本書の内容は基本的な技法とその効果を簡単に(著者曰く"一口大"に)まとめたものです。
ひとつのひとつの説明文は300〜400字程度と、かなりコンパクトなものとなっています(もっとも、字数が多ければ質が高いというものではないですが)。
映画を制作したいと思っている人達に向けての最初のステップとして読まれることを想定して、あえてそうしたのかもしれません。
既に出版されているより詳しい内容の技法書を読んだ経験のある人にとっては、物足りなく感じても無理はないです。オススメはできません。
ただ、同系列の他の本に比べ、著者の柔軟な視点にこの本の良さを感じました。
古典の名作から最新のものまで幅広い年代、国、ジャンルの作品を具体例として挙げており、世間一般の評価に捉われておらず、それは分析の仕方にも表れています。
そうした点では新鮮で読みがいのある一冊です。
しかしそれにしても、「映画はこう作られていく」(原題 : This Is How You Make a Movie)のタイトルを掲げるには程遠く値段もすこし高めではないでしょうか。
客観的にも、ここはあえて控えめな評価とさせていただきます。
こう語られていることからも明らかなように、本書の内容は基本的な技法とその効果を簡単に(著者曰く"一口大"に)まとめたものです。
ひとつのひとつの説明文は300〜400字程度と、かなりコンパクトなものとなっています(もっとも、字数が多ければ質が高いというものではないですが)。
映画を制作したいと思っている人達に向けての最初のステップとして読まれることを想定して、あえてそうしたのかもしれません。
既に出版されているより詳しい内容の技法書を読んだ経験のある人にとっては、物足りなく感じても無理はないです。オススメはできません。
ただ、同系列の他の本に比べ、著者の柔軟な視点にこの本の良さを感じました。
古典の名作から最新のものまで幅広い年代、国、ジャンルの作品を具体例として挙げており、世間一般の評価に捉われておらず、それは分析の仕方にも表れています。
そうした点では新鮮で読みがいのある一冊です。
しかしそれにしても、「映画はこう作られていく」(原題 : This Is How You Make a Movie)のタイトルを掲げるには程遠く値段もすこし高めではないでしょうか。
客観的にも、ここはあえて控えめな評価とさせていただきます。