「読書療法」を提唱する著者の古典エッセイ。万葉集、枕草子、古事記から約50の歌をとりあげながら、今の時代と共通する20のエピソードにまとめられている。「好転」「戦略」「洒脱」「遭遇」「喪失」といった５つのテーマにもとづいて、小さな暮らしから、恋愛、仕事、人生まで深遠な世界観を表現している。それができるのは、著者が「読書療法」を提唱するだけでなく、読むこと、書くこと、行動することの実践者であるからだと感じた。敷居が高くないので「古典入門」の一冊としても良書。
先人の歌、わかりやすい解説、そして「今の生活に役立つヒント」という構成になっている。今の生活のヒントには、「リフレーミング」や「ジョハリの窓」などの心理的アプローチから、「潜在意識」にまで触れている。若い方から、年配の人まで、どんな世代の読み手にも、静かに寄り添う慈愛がある。静かな気持ちにさせてくれ、かつ心が温もる一冊。
装丁がとても美しく、手触り感も良く上品。林望氏が監修されているので、50代以上の方は嬉しい。ギフトに最適で、つらいこと、かなしいことなどがあった方への贈り物として、病気療養中の方にも心癒される本として喜ばれると感じる。著者の言葉の選びと運びは、読書療法家であるがゆえに、考え抜かれたもので、言葉のくすり=ことぐすり、になっているからだと思う。本の温かな質感に触れて、心がほっこりする。
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