これまで、北一輝の著作を手にしようと思うと、『北一輝著作集』を買うか、古書店で稀覯本を探すしかなかった。しかも、著作集などでは、旧字体で書かれていたため、現代の読者にはとても手がつけられないという有様だった。
そうした事情を考えると、北一輝のいくつかの著作を一冊にまとめるばかりでなく、新字体で表記するという、この本の試みはまさに画期的である。もちろん、文語体という限界はあるが、『国体論および純正社会主義』などへの接近は比較にならないほど容易になった。私は、率直に言って、この著作集の出版を企画した出版社の良心を讃えたい。
『支那革命外史』が序文しか収録されていない点は、惜しまれるが、入手困難な『国体論および純正社会主義』と『日本改造法案大綱』が丸ごと収録されている点を考えれば、十分すぎるぐらいだ。
今も怪しい光を放ち続ける北一輝という男が、いかに考え、いかに行動しようとしたのか。そうした点に迫る勇気ある読者を、この本は待ち続けている。
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