大学入試に向けた英語の勉強をする際には、まず最初に英文法と語彙(単語・熟語)を身につけて英語の基礎固めを進めることが多いと思います。共通テストがリーディングとリスニングのみとなり文法問題・語法問題が単独では出題されなくなったこともあり、ともすれば英文法の学習は軽視されがちですが、長文読解・英作文のみならずリスニングにおいても英文法は語彙と同じくらい大切な基礎となります。少なくとも大学入試においては英文法と語彙が7〜8割の重要度です。英会話においても正確な文法知識があることで、より深く会話をする・思っていることをきちんと伝える・相手と対等にコミュニケーションをとることができるようになります。
そうはいっても｢高校とってもやさしい英文法｣や｢Evergreen｣などを通読してインプットし、｢入門英文法問題精講｣や｢英文法ファイナル｣｢ネクステージ｣などでアウトプットの練習をするといった英文法の一般的な学習法はなかなか退屈なものです。
本書はインプットとアウトプットをバランスよく1冊である程度のレベルまで高めていこうという参考書+問題集になります。大学入試に必須の英文法212項目(Ruleと表されている)が取り上げられています。大学入試で必要な文法・語法問題の約95％をカバーする内容となります。書籍では｢1日の学習量は最長でも9分。最短で3分。7週間のスケジュールでムリなくムダなくマスター｣と魅力的な謳い文句で紹介されていますが、さすがにそんなに簡単にはいきません。できれば｢Evergreen｣を通読して理解、少なくとも｢高校とってもやさしい英文法｣｢大岩のいちばんはじめの英文法｣を理解して暗記しているレベルでないと挫折してしまいそうな難易度・ボリュームです。
基本的な構成としては各Ruleごとに基本的に4ページ分で1セットです。だたし同じページで複数のRuleが扱われているので全体のページ数はそこまではありません。これが1日分(Day〇〇となる)と言われています。1ページ目は最終的に暗唱しておくべき例文と訳、2ページ目は1ページ目で扱われている文法事項の解説です。ここまではインプット部分に相当します。3ページ目はそのRuleで扱った文法事項の練習問題(Exsercise)です。4ページ目はその解説と入試問題を解く際の注意点やテクニックが示されています。英文法でもインプットした内容をすぐにアウトプットする練習は大切です。1周目はこの4ページセットで進めることが望まれます。ここはアウトプットに相当します。
これ以外に各章の文法事項の冒頭パートでIntroductionとして1ページ目は最終的に暗唱しておくべき例文と訳、2ページ目は1ページ目で扱われている文法事項の解説のみで構成されるRuleがあり、各章の終わりには章末問題があります。この2つに関してはDay〇〇のノルマに含まれないので、先にもコメントした｢1日の学習量は最長でも9分。最短で3分。7週間のスケジュールでムリなくムダなくマスター｣とはなかなかいかないということの根拠となります。索引はしっかりとしていますので、復習・問題演習の際には辞書的に活用することも可能でしょう。
さてここまでなら他の英文法についての参考書+問題集と変わらないことになりますが、キク英文法の最大の特徴は音声にあります。音声は付属のCDで聴く・付属のCDをPCなどでMP3ファイルに変換あるいは専用ホームページからMP3ファイルをダウンロードするなどしてスマホや音楽プレイヤーで聴く・専用の英語学習アプリboocoを利用して聴くなどの方法があります。個人的にはMP3ファイルをスマホや音楽プレイヤーに入れて聴くことをお勧めしたいです。私はそうしています。通勤や通学の隙間時間を利用して繰り返し聴くことで基本例文が頭に染み込みます。忘れにくい記憶へと変わっていきます。英文法の学習でも英文で覚えることは非常に効果的ですし、リーディング・ライティング・リスニングでも役立つ知識が身につきます。基本例文が暗唱できるまで毎日のように繰り返し聴くことが大切です。
私自身が試して効果的だった方法を紹介しておきます。いきなり音声を聞くのではなく、まず1周目は机に向かってじっくりとテキストに向かい合い、解説までしっかり読み込んでRuleを確認し問題を解き解説を読むところまでやり切ります。学習したRuleごとに音声を繰り返して聞くのもありでしょう。学習が進むごとに聞く分量は増えていくことになります。ここまでは少なからず根気と我慢が必要になります。テキストでの学習は2周目以降は問題を解いてみて自信がないところやあやふやな知識のところをテキストのRuleに返って復習するだけでもよいでしょう。とにかく毎日のように隙間時間で全体を1周聞くことです。ある程度周回したら忘れないように音声を聞いて記憶のメンテナンスをするだけでもよいかもしれません。その場合でも時々はテキストに戻ることは効果的です。
対象は基本は大学入試を目指す受験生なのでしょうが、英検などを目指して英語学習する目指す社会人や大学生も十分に使える内容となっています。いずれにしても英文法を学ぶ1冊目としては適しておらず、｢Evergreen｣を通読して理解、少なくとも｢高校とってもやさしい英文法｣｢大岩のいちばんはじめの英文法｣を理解して暗記しているレベルからの方が効果的に使えると思います。もちろん本書の内容のみでは問題演習が不足します。別個に問題集でアウトプットの練習をされることをお勧めします。
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