スペイン語版を皮切りに、2017年に写真界でもかなり話題になっていました。なにせApture財団のPhotobook Awardで審査員特別賞も受賞しているし、コミック形式のドキュメンタリーが写真集として評価されたことも、写真を学ぶ私には関心がありました。でも、残念ながらこの本はスペイン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語版のみしか出ておらず、英語版がありませんでしたし、今回の日本語版を心待ちにしていました!
民族大移動時代、そしてEUの分断が始まっていること感じる昨今。スペイン人ジャーナリスト2人によるこの本は、その分断の気配を2014年1月から2年間かけて取材し、地中海から極寒の北欧〜ロシア故郷まで、国境をキーに取材を進めていきます。そもそもEUの存在から疑っていく視点は面白いと思いました。その欧州にうごめく亀裂を私たちが知るために、この「La Grieta」はあるんじゃないか?とさえ、読み終えた今思います。
コミック形式という新しい手法で作ったのもポイント。一見するとイラストに見えますが、全ページ、755コマ全て写真家カルロス・スポットルノが撮った写真です。なぜこのコミック形式にたどり着いたのか?なども、あとがきに書いてあり、興味を持ちました。フォトジャーナリズムを学ぶ人たちに、手にとってもらいたい1冊です。
この日本語版がとてもいいなと思ったのは、枠外にキャプションがついている点です。なので話が難しいところでも、置いてきぼりを食らうことがありません。写真に写っている壁の落書きや看板でさえ、枠外に小さく訳をつけている。これは非常に助かります。
例えばp10にある「Santa Europa da Esperança」には「希望の聖ヨーロッパ」と脚注が書いてある。「人々はEUという連合国の幸せを夢見ていたのに……今は?」っていう著者の疑問点を感じさせる1コマ。絵だけを追っていったのなら、言語がわからない私たちはスルーするかもしれないけど、こうした脚注があることで読者の解釈が広がるわけです。
きっと知りたいと思っている人は多いと思います。ただ日本にいると(日本語だけだと)、どこを手掛かりに、どうやってニュースを追って行ったらいいのかさえわからなくなる。
欧州難民問題の入門編として、この日本語版「亀裂」は役立つんで、ぜひ手にとっていただけたら……と思います。2160円という良心的な値段も嬉しいです。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥2,200¥2,200 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥2,200¥2,200 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥398¥398 税込
無料配送 5月28日-29日にお届け
発送元: 【マケプレお急ぎ便対応店舗】大安商店 販売者: 【マケプレお急ぎ便対応店舗】大安商店
¥398¥398 税込
無料配送 5月28日-29日にお届け
発送元: 【マケプレお急ぎ便対応店舗】大安商店
販売者: 【マケプレお急ぎ便対応店舗】大安商店
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
亀裂――欧州国境と難民 単行本 – 2019/5/22
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥2,200","priceAmount":2200.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,200","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"SCAnt%2BHFVME2brsR5wjaTDpo9M6mZSj239gcxFoVvHGiAA0%2F31SIYUrbYKDcz1dbf%2FqKJs0sfgKw5rF%2F2Cv7G1AAnfp4Ywy1eTHlO%2BOFEg40jDTmNQwl4E1RuR9T9ZP4hNuQO4iiupg%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥398","priceAmount":398.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"398","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"SCAnt%2BHFVME2brsR5wjaTDpo9M6mZSj2mx7maKF46%2BoONnqhYkPKf42nAjFQ3FiFBmhtl%2B%2BhrcpeXWhAKFJ4HSVkGNl5WUlzeumWlfkSjD6XIkogMSB9Tl1pzosprMWBWscbdUybnk8Vxb5XY3aYbtHyNYGjAaNmvD%2FBFIQRqeVB8dckERBJZA%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
ヨーロッパに押し寄せる移民・難民たち
地中海、国境地帯で、何が起こっているのか br><; br> サブサハラからアフリカのスペイン領を目指す人々、地中海での難民救助作戦、 酷暑のバルカン・ルートや極寒のロシアを通り抜けてやってくる難民たち……。
総合的視点でヨーロッパ難民問題をとらえた、スパニッシュ・コミック
難民を保護する一方で排除する、ヨーロッパに広がる〈亀裂〉を描く 755コマ全てが写真から構成された「フォト」グラフィックノベル
『ニューヨークタイムズ』『ル・モンド』『リベラシオン』など世界中で絶賛! 世界報道写真コンテスト入賞
地中海、国境地帯で、何が起こっているのか br><; br> サブサハラからアフリカのスペイン領を目指す人々、地中海での難民救助作戦、 酷暑のバルカン・ルートや極寒のロシアを通り抜けてやってくる難民たち……。
総合的視点でヨーロッパ難民問題をとらえた、スパニッシュ・コミック
難民を保護する一方で排除する、ヨーロッパに広がる〈亀裂〉を描く 755コマ全てが写真から構成された「フォト」グラフィックノベル
『ニューヨークタイムズ』『ル・モンド』『リベラシオン』など世界中で絶賛! 世界報道写真コンテスト入賞
- 本の長さ174ページ
- 言語日本語
- 出版社花伝社
- 発売日2019/5/22
- ISBN-104763408860
- ISBN-13978-4763408860
商品の説明
出版社からのコメント
「亀裂を食い止めなければ、骨組みごと崩壊する。」
70年間続くヨーロッパの平和をゆるがす、大量の難民流入。
現場では何が起こっているのか?
――地中海から北極圏までヨーロッパの輪郭をめぐることで明らかにする、渾身のルポルタージュ。
70年間続くヨーロッパの平和をゆるがす、大量の難民流入。
現場では何が起こっているのか?
――地中海から北極圏までヨーロッパの輪郭をめぐることで明らかにする、渾身のルポルタージュ。
著者について
写真:カルロス・スポットルノ(Carlos Spottorno)
1971年ハンガリー・ブダペシュト生まれ。イタリア国立ローマ美術学校を卒業し、広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとなる。2001年にドキュメンタリー写真家として独立。とりわけ社会、経済、政治分野に関する写真を、『週刊エル・パイス』をはじめとするスペイン内外のメディアに提供している。また、これまでに6冊の写真集を出版している。2003年と2015年の世界報道写真賞ほか、写真・写真集での受賞多数。
文:ギジェルモ・アブリル(Guillermo Abril)
1981年スペイン・マドリード生まれ。法学と経済学を専攻し、マドリード自治大学でジャーナリズムの修士号を取得。2007年より『週刊エル・パイス』の評論記事、人物紹介記事、ルポルタージュなどを担当。2015年に世界報道写真賞を受賞した短編ドキュメンタリー映画、『欧州の入り口で(A las puertas de Europa)』の制作協力者。アメリカ合衆国の死刑囚についてのドキュメンタリー映画『復活クラブ(The Resurrection Club)』の副監督。
訳:上野貴彦(うえの・たかひこ)
1990年生まれ。現在、一橋大学大学院社会学研究科・博士後期課程在学中。スペイン・バルセロナ自治大学東アジア研究所客員研究員。一橋大学社会学部在学中にイタリア・トレント大学社会学部に派遣留学。専攻は国際社会学・国際移民研究(スペインにおける移民の社会統合と地域)。
1971年ハンガリー・ブダペシュト生まれ。イタリア国立ローマ美術学校を卒業し、広告代理店のクリエイティブ・ディレクターとなる。2001年にドキュメンタリー写真家として独立。とりわけ社会、経済、政治分野に関する写真を、『週刊エル・パイス』をはじめとするスペイン内外のメディアに提供している。また、これまでに6冊の写真集を出版している。2003年と2015年の世界報道写真賞ほか、写真・写真集での受賞多数。
文:ギジェルモ・アブリル(Guillermo Abril)
1981年スペイン・マドリード生まれ。法学と経済学を専攻し、マドリード自治大学でジャーナリズムの修士号を取得。2007年より『週刊エル・パイス』の評論記事、人物紹介記事、ルポルタージュなどを担当。2015年に世界報道写真賞を受賞した短編ドキュメンタリー映画、『欧州の入り口で(A las puertas de Europa)』の制作協力者。アメリカ合衆国の死刑囚についてのドキュメンタリー映画『復活クラブ(The Resurrection Club)』の副監督。
訳:上野貴彦(うえの・たかひこ)
1990年生まれ。現在、一橋大学大学院社会学研究科・博士後期課程在学中。スペイン・バルセロナ自治大学東アジア研究所客員研究員。一橋大学社会学部在学中にイタリア・トレント大学社会学部に派遣留学。専攻は国際社会学・国際移民研究(スペインにおける移民の社会統合と地域)。
登録情報
- 出版社 : 花伝社 (2019/5/22)
- 発売日 : 2019/5/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 174ページ
- ISBN-10 : 4763408860
- ISBN-13 : 978-4763408860
- Amazon 売れ筋ランキング: - 528,222位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,909位外交・国際関係 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.7つ
5つのうち4.7つ
3グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
イメージ付きのレビュー
5 星
写真ジャーナリズムを学ぶ人へ!
スペイン語版を皮切りに、2017年に写真界でもかなり話題になっていました。なにせApture財団のPhotobook Awardで審査員特別賞も受賞しているし、コミック形式のドキュメンタリーが写真集として評価されたことも、写真を学ぶ私には関心がありました。でも、残念ながらこの本はスペイン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語版のみしか出ておらず、英語版がありませんでしたし、今回の日本語版を心待ちにしていました!民族大移動時代、そしてEUの分断が始まっていること感じる昨今。スペイン人ジャーナリスト2人によるこの本は、その分断の気配を2014年1月から2年間かけて取材し、地中海から極寒の北欧〜ロシア故郷まで、国境をキーに取材を進めていきます。そもそもEUの存在から疑っていく視点は面白いと思いました。その欧州にうごめく亀裂を私たちが知るために、この「La Grieta」はあるんじゃないか?とさえ、読み終えた今思います。コミック形式という新しい手法で作ったのもポイント。一見するとイラストに見えますが、全ページ、755コマ全て写真家カルロス・スポットルノが撮った写真です。なぜこのコミック形式にたどり着いたのか?なども、あとがきに書いてあり、興味を持ちました。フォトジャーナリズムを学ぶ人たちに、手にとってもらいたい1冊です。この日本語版がとてもいいなと思ったのは、枠外にキャプションがついている点です。なので話が難しいところでも、置いてきぼりを食らうことがありません。写真に写っている壁の落書きや看板でさえ、枠外に小さく訳をつけている。これは非常に助かります。例えばp10にある「Santa Europa da Esperança」には「希望の聖ヨーロッパ」と脚注が書いてある。「人々はEUという連合国の幸せを夢見ていたのに……今は?」っていう著者の疑問点を感じさせる1コマ。絵だけを追っていったのなら、言語がわからない私たちはスルーするかもしれないけど、こうした脚注があることで読者の解釈が広がるわけです。きっと知りたいと思っている人は多いと思います。ただ日本にいると(日本語だけだと)、どこを手掛かりに、どうやってニュースを追って行ったらいいのかさえわからなくなる。欧州難民問題の入門編として、この日本語版「亀裂」は役立つんで、ぜひ手にとっていただけたら……と思います。2160円という良心的な値段も嬉しいです。
フィードバックをお寄せいただきありがとうございます
申し訳ありませんが、エラーが発生しました
申し訳ありませんが、レビューを読み込めませんでした
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
スペイン語版を皮切りに、2017年に写真界でもかなり話題になっていました。なにせApture財団のPhotobook Awardで審査員特別賞も受賞しているし、コミック形式のドキュメンタリーが写真集として評価されたことも、写真を学ぶ私には関心がありました。でも、残念ながらこの本はスペイン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語版のみしか出ておらず、英語版がありませんでしたし、今回の日本語版を心待ちにしていました!
民族大移動時代、そしてEUの分断が始まっていること感じる昨今。スペイン人ジャーナリスト2人によるこの本は、その分断の気配を2014年1月から2年間かけて取材し、地中海から極寒の北欧〜ロシア故郷まで、国境をキーに取材を進めていきます。そもそもEUの存在から疑っていく視点は面白いと思いました。その欧州にうごめく亀裂を私たちが知るために、この「La Grieta」はあるんじゃないか?とさえ、読み終えた今思います。
コミック形式という新しい手法で作ったのもポイント。一見するとイラストに見えますが、全ページ、755コマ全て写真家カルロス・スポットルノが撮った写真です。なぜこのコミック形式にたどり着いたのか?なども、あとがきに書いてあり、興味を持ちました。フォトジャーナリズムを学ぶ人たちに、手にとってもらいたい1冊です。
この日本語版がとてもいいなと思ったのは、枠外にキャプションがついている点です。なので話が難しいところでも、置いてきぼりを食らうことがありません。写真に写っている壁の落書きや看板でさえ、枠外に小さく訳をつけている。これは非常に助かります。
例えばp10にある「Santa Europa da Esperança」には「希望の聖ヨーロッパ」と脚注が書いてある。「人々はEUという連合国の幸せを夢見ていたのに……今は?」っていう著者の疑問点を感じさせる1コマ。絵だけを追っていったのなら、言語がわからない私たちはスルーするかもしれないけど、こうした脚注があることで読者の解釈が広がるわけです。
きっと知りたいと思っている人は多いと思います。ただ日本にいると(日本語だけだと)、どこを手掛かりに、どうやってニュースを追って行ったらいいのかさえわからなくなる。
欧州難民問題の入門編として、この日本語版「亀裂」は役立つんで、ぜひ手にとっていただけたら……と思います。2160円という良心的な値段も嬉しいです。
民族大移動時代、そしてEUの分断が始まっていること感じる昨今。スペイン人ジャーナリスト2人によるこの本は、その分断の気配を2014年1月から2年間かけて取材し、地中海から極寒の北欧〜ロシア故郷まで、国境をキーに取材を進めていきます。そもそもEUの存在から疑っていく視点は面白いと思いました。その欧州にうごめく亀裂を私たちが知るために、この「La Grieta」はあるんじゃないか?とさえ、読み終えた今思います。
コミック形式という新しい手法で作ったのもポイント。一見するとイラストに見えますが、全ページ、755コマ全て写真家カルロス・スポットルノが撮った写真です。なぜこのコミック形式にたどり着いたのか?なども、あとがきに書いてあり、興味を持ちました。フォトジャーナリズムを学ぶ人たちに、手にとってもらいたい1冊です。
この日本語版がとてもいいなと思ったのは、枠外にキャプションがついている点です。なので話が難しいところでも、置いてきぼりを食らうことがありません。写真に写っている壁の落書きや看板でさえ、枠外に小さく訳をつけている。これは非常に助かります。
例えばp10にある「Santa Europa da Esperança」には「希望の聖ヨーロッパ」と脚注が書いてある。「人々はEUという連合国の幸せを夢見ていたのに……今は?」っていう著者の疑問点を感じさせる1コマ。絵だけを追っていったのなら、言語がわからない私たちはスルーするかもしれないけど、こうした脚注があることで読者の解釈が広がるわけです。
きっと知りたいと思っている人は多いと思います。ただ日本にいると(日本語だけだと)、どこを手掛かりに、どうやってニュースを追って行ったらいいのかさえわからなくなる。
欧州難民問題の入門編として、この日本語版「亀裂」は役立つんで、ぜひ手にとっていただけたら……と思います。2160円という良心的な値段も嬉しいです。
このレビューの画像
2019年5月24日に日本でレビュー済み
ヨーロッパの国境と難民の報道写真がマンガのコマに収められており、写真集として鑑賞することもできます。セリフは新聞記者のルポで、淡々と綴られた文章から、色々と考えさせられました。
もとが新聞の日曜版というだけあって、情報量がとても多いです。取材に行っている場所も、一部は超マニアック。フィンランドとロシアの間がこんなことになっているなんて全く知らなかった...。
巻末に読書ガイドがついているものの、何度も読み返さないと、各コマの写真に込められた意味は理解できなさそうです。まずはマンガとして、次は写真集として、そして最後に『〜を知るための60章』シリーズなどを片手に深追いしてみるのも良さそうです。
もとが新聞の日曜版というだけあって、情報量がとても多いです。取材に行っている場所も、一部は超マニアック。フィンランドとロシアの間がこんなことになっているなんて全く知らなかった...。
巻末に読書ガイドがついているものの、何度も読み返さないと、各コマの写真に込められた意味は理解できなさそうです。まずはマンガとして、次は写真集として、そして最後に『〜を知るための60章』シリーズなどを片手に深追いしてみるのも良さそうです。
2021年1月10日に日本でレビュー済み
スペインの『週刊エル・パイス』の記者であるギジェルモ・アブリル氏とハンガリー生まれの報道写真家カルロス・スポットルノ氏が、欧州に押し寄せる移民の波を2015年前後の3年にわたって追った書です。スペインでは2016年に出版され、邦訳は一昨年2019年5月に出ました。
この書は「フォト」グラフィックノベル風と称する作りになっています。スポットルノ氏が撮影した755枚の取材写真を、平板なマンガに見えるようにあえて加工して掲載しています。そうした理由は、「写真一枚一枚に立体感があると読者の視線が焦点を探してしまい、なめらかにストーリーを追うことができないため」だとか。なんとも不思議な味わいの書です。
スペインを拠点とするジャーナリストですから、著者二人はまず、母国の対岸モロッコに存在するスペインの飛び地メリリャへと向かいます。ここは1936年にフランコ将軍率いる軍事クーデターが開始された地点であり、政権を握ったあとも将軍が思い入れのある地としてスペイン領のままです。したがってアフリカ大陸にありながらEUの一部でもあるため、モロッコとの国境には高い柵が作られたものの、それを飛び越えて“ヨーロッパ”へと移住を企てる外国人が後を絶ちません。激しい内戦から逃げてシリア人もエジプトからモロッコを経由してはるばるこのメリリャを目指します。スペインの反軍事組織である治安警察は彼らを押し返そうとしますが、移民たちは文民警察である国家警察の署内に駆け込めれば移民一時滞在センターに収容されるというのですから不思議な話です。
著者二人はこのメリリャを皮切りに、さらにヨーロッパ各地の《国境》を訪ねて回ります。
ヨーロッパとアジアの交差点であるブルガリア・ギリシャ・トルコ国境。
チュニジアとイタリアの中継地点であるシチリア島。
旧ユーゴスラビアとハンガリーの国境。
ポーランドと旧ソビエトの国境。
EU内のロシアの飛び地カリーニングラード。
フィンランドとロシア連邦との国境。
こうした国境で当局はジャーナリスト二人に必ずしもすべてを見せてはくれませんし、すべてを記録することを許してはくれません。二人は時に身元を偽りながら危険な旅を続け、移民の苦境を伝えようと努めます。映像描写がマンガ風であるとはいえ、事実の重みが十分伝わってきます。
2020年に拡大した新型コロナウイルスはこうした国境沿いの様子を大きく変えているのかもしれませんが、その現状は寡聞にして知りません。移民のみならず外国人ジャーナリストの入国もまた難しくなっていることでしょう。いつかその様子が明らかになればよいのですが。
----------------------
以下の類書を紹介しておきます。
◆村山 祐介『 エクソダス: アメリカ国境の狂気と祈り 』(新潮社)
:著者の村山祐介氏は三菱商事での勤務経験もあるジャーナリスト。転職後に今年2020年3月まで在籍していた朝日新聞のGLOBE編集部員のとき、アメリカ合衆国を目指して中南米を北上する移民たちに密着取材してまとめたのがこの『エクソダス』です。
.
この書は「フォト」グラフィックノベル風と称する作りになっています。スポットルノ氏が撮影した755枚の取材写真を、平板なマンガに見えるようにあえて加工して掲載しています。そうした理由は、「写真一枚一枚に立体感があると読者の視線が焦点を探してしまい、なめらかにストーリーを追うことができないため」だとか。なんとも不思議な味わいの書です。
スペインを拠点とするジャーナリストですから、著者二人はまず、母国の対岸モロッコに存在するスペインの飛び地メリリャへと向かいます。ここは1936年にフランコ将軍率いる軍事クーデターが開始された地点であり、政権を握ったあとも将軍が思い入れのある地としてスペイン領のままです。したがってアフリカ大陸にありながらEUの一部でもあるため、モロッコとの国境には高い柵が作られたものの、それを飛び越えて“ヨーロッパ”へと移住を企てる外国人が後を絶ちません。激しい内戦から逃げてシリア人もエジプトからモロッコを経由してはるばるこのメリリャを目指します。スペインの反軍事組織である治安警察は彼らを押し返そうとしますが、移民たちは文民警察である国家警察の署内に駆け込めれば移民一時滞在センターに収容されるというのですから不思議な話です。
著者二人はこのメリリャを皮切りに、さらにヨーロッパ各地の《国境》を訪ねて回ります。
ヨーロッパとアジアの交差点であるブルガリア・ギリシャ・トルコ国境。
チュニジアとイタリアの中継地点であるシチリア島。
旧ユーゴスラビアとハンガリーの国境。
ポーランドと旧ソビエトの国境。
EU内のロシアの飛び地カリーニングラード。
フィンランドとロシア連邦との国境。
こうした国境で当局はジャーナリスト二人に必ずしもすべてを見せてはくれませんし、すべてを記録することを許してはくれません。二人は時に身元を偽りながら危険な旅を続け、移民の苦境を伝えようと努めます。映像描写がマンガ風であるとはいえ、事実の重みが十分伝わってきます。
2020年に拡大した新型コロナウイルスはこうした国境沿いの様子を大きく変えているのかもしれませんが、その現状は寡聞にして知りません。移民のみならず外国人ジャーナリストの入国もまた難しくなっていることでしょう。いつかその様子が明らかになればよいのですが。
----------------------
以下の類書を紹介しておきます。
◆村山 祐介『 エクソダス: アメリカ国境の狂気と祈り 』(新潮社)
:著者の村山祐介氏は三菱商事での勤務経験もあるジャーナリスト。転職後に今年2020年3月まで在籍していた朝日新聞のGLOBE編集部員のとき、アメリカ合衆国を目指して中南米を北上する移民たちに密着取材してまとめたのがこの『エクソダス』です。
.